おひとりさまの終活|身寄りがない人がやっておくべき準備を解説

「おひとりさま」として老後を迎える方が増えています。生涯未婚の方、配偶者と死別した方、子どものいない方など事情はさまざまですが、共通するのは「いざというときに頼れる家族が身近にいない」という不安です。現行制度では、判断能力が下がったときや入院・手術のとき、そして亡くなったあとの手続きは、家族が担うことを前提にしている場面が少なくありません。身寄りがない場合は、その部分を元気なうちに自分で準備しておくことが安心につながります。この記事では、おひとりさまが終活で備えておきたいことを、場面ごとに整理してやさしく解説します。

おひとりさまが終活で備えるべきこと

おひとりさまの終活を考えるときは、「困りごとが起きる場面」を先にイメージすると準備しやすくなります。大きく分けて、次の3つの場面があります。

  • 判断能力が低下したとき:認知症などでお金の管理や契約が自分でできなくなると、預金の引き出しや施設の契約に支障が出ます。
  • 入院・手術のとき:病院から身元保証人や緊急連絡先を求められることがあり、手術の同意や入院費の精算で困る場面があります。
  • 亡くなったあと:葬儀・納骨・役所の手続き・遺品整理・部屋の解約など、誰かが動かなければならない事務が数多く残ります。

単身世帯は年々増える傾向にあり、65歳以上の一人暮らしも大きく増えています。おひとりさまは決して特別な存在ではなくなっていますが、その分、公的サービスや民間サービスをどう組み合わせるかを、自分で判断して選ぶ必要があります。準備は「気力・体力・判断力があるうち」ほど進めやすく、選べる選択肢も多くなります。

家族がいれば自然に引き受けてもらえるこれらの役割を、おひとりさまは第三者や専門家、公的な制度を組み合わせて備えていくことになります。まず何から始めればよいか迷う方は、終活は何から始めればいいかの記事もあわせて参考にしてください。

元気なうちにやること一覧

まずは、判断能力があり体も動く「元気なうち」にできることから手をつけましょう。下の表は、おひとりさまが早めに整えておきたい項目の目安です。

項目内容の目安
財産・書類の整理預貯金・保険・不動産・年金・借入などを一覧化し、通帳や権利証の保管場所をまとめる
緊急連絡先の準備親族・友人・専門家など、連絡してほしい人と連絡先を書き出しておく
エンディングノート医療・介護・葬儀の希望、資産、連絡先などを1冊にまとめる
医療・介護の希望延命治療の希望、望む介護の形、かかりつけ医などを整理する
デジタル情報スマホやパソコン、ネット口座、サブスクのID・解約方法をメモしておく
住まいの整理不要品の処分、賃貸契約や持ち家の扱いを考えておく

とくに大切なのが財産と書類の「見える化」です。どこに何があるか本人しか分からない状態だと、いざというときに支援者や専門家が動けません。口座や保険、不動産、契約中のサービスを書き出し、保管場所を一つにまとめておくだけでも、あとの手続きが大きくスムーズになります。

エンディングノートは書き方の順序に迷いやすいものです。エンディングノートの書き方を参考に、書けるところから少しずつ埋めていくとよいでしょう。

判断能力が低下したときへの備え

認知症などで判断能力が下がると、銀行預金が引き出せなくなったり、介護施設の契約ができなくなったりすることがあります。おひとりさまの場合は代わりに動いてくれる家族がいないため、次のような制度を早めに検討しておくと安心です。

  • 任意後見制度:元気なうちに、信頼できる人や専門家(司法書士・弁護士など)と契約を結び、判断能力が下がったあとの財産管理や契約を任せる仕組みです。公正証書で契約します。
  • 日常生活自立支援事業:社会福祉協議会が運営し、日常的なお金の管理や書類の預かりなどを支援してくれる制度です。比較的軽い支援から利用できます。
  • 法定後見制度:すでに判断能力が下がっている場合に、家庭裁判所が後見人を選ぶ仕組みです。

判断能力の低下に備えた財産管理の考え方は、認知症に備える財産管理の記事でくわしく整理しています。どの制度が向いているかは状況によって異なるため、専門家に相談しながら選ぶとよいでしょう。

入院・手術のときの備え(身元保証)

入院や手術、施設入所の際、病院や施設から「身元保証人」「身元引受人」を求められることがあります。身元保証人には、入院費の支払い保証、緊急時の連絡先、退院・退所時の引き取りといった役割が期待されます。身寄りがないと、この点で不安を感じる方が多いようです。

家族に頼めない場合は、民間の身元保証サービスを利用する選択肢があります。事業者が身元保証人の役割を代行し、緊急時の対応や手続きの支援を行うものです。費用は事業者によって差がありますが、入会金・保証料などで数十万円程度、これに月額利用料や実費が加わることが多いようです(あくまで目安です)。

ただし、身元保証サービスには注意点もあります。事業者の経営が続くか、預けたお金がきちんと管理されるか、契約内容が明確かなどを契約前によく確認することが大切です。過去には事業者の破綻がニュースになった例もあります。契約は慎重に行い、内容が分かりにくいときは消費生活センターや専門家に相談してください。

なお、身元保証人がいないことだけを理由に入院を断ることは、国の通知でも適切でないとされています。困ったときは、病院の相談窓口(医療ソーシャルワーカー)にも相談してみましょう。

死後事務委任契約

亡くなったあとには、葬儀や納骨、役所への届け出、健康保険・年金の手続き、公共料金や賃貸契約の解約、遺品整理など、多くの事務が発生します。これらは相続とは別に「誰かが実際に手を動かす」必要があるもので、身寄りがないと引き受け手がいません。

そこで役立つのが死後事務委任契約です。生前に、信頼できる人や専門家(行政書士・司法書士・弁護士など)と契約を結び、亡くなったあとの事務を委任しておく仕組みです。契約はトラブルを防ぐため公正証書で結ぶのが一般的です。

委任できる内容の例としては、葬儀・火葬・納骨、役所への死亡届や各種手続き、医療費や施設費の精算、賃貸住宅の明け渡し、遺品整理などがあります。費用は依頼する範囲によって変わりますが、契約時の報酬に加え、実際の事務にかかる実費や預託金が必要になることが多く、全体で数十万円以上を見込んでおくと安心です(目安)。

なお、死後事務委任契約は財産の分け方を決める遺言とは役割が異なります。遺言は「誰に何を渡すか」を、死後事務委任は「誰が実際の手続きを行うか」を定めるもので、両方をそろえて初めて死後の備えが完成します。契約する相手が信頼できるか、費用や預託金の管理方法が明確かも、事前によく確認しておきましょう。

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遺言書の準備

おひとりさまで相続人がいない場合、亡くなった方の財産は、最終的に国庫(国のもの)に入るのが原則です。「お世話になった人に渡したい」「団体に寄付したい」という希望があるなら、遺言書を用意しておく必要があります。

遺言書があれば、法定相続人以外の人や団体に財産を譲る「遺贈」ができます。たとえば、親身になってくれた友人や、支援したい福祉団体・自治体などへ寄付する形です。確実に実現するためには、形式の不備で無効にならないよう、公正証書遺言にするのが安心です。あわせて、遺言の内容を実行する「遺言執行者」を決めておくとスムーズです。

相続人はまったくいないと思っていても、疎遠な親族が相続人にあたる場合があります。誰が相続人になるのか、いない場合に財産をどうしたいのかを一度整理しておくと、遺言を作るべきかどうかの判断がしやすくなります。遺言書の具体的な書き方や注意点は、遺言書の書き方の記事で解説しています。

葬儀とお墓の準備

葬儀やお墓も、おひとりさまが早めに考えておきたいテーマです。従来は家族や子孫が引き継ぐことを前提としていましたが、承継する人がいなくても利用できる選択肢が広がっています。

  • 葬儀の生前契約:葬儀社と生前に契約し、葬儀の内容や費用を決めておく方法です。死後事務委任契約と組み合わせると、実際の手配まで任せられます。
  • 永代供養:寺院や霊園が遺骨を管理・供養してくれる方式で、承継者がいなくても利用できます。
  • 合祀・樹木葬・納骨堂:他の方と一緒に埋葬する合祀や、樹木葬、納骨堂など、管理の負担が少ない方法もあります。

承継者を必要としない供養の形については、永代供養の記事でくわしく紹介しています。費用や供養の内容は施設によって異なるため、複数を比較し、見学して選ぶと安心です。

相談できる窓口

おひとりさまの終活は、一人で抱え込まず、公的な窓口や専門家に相談しながら進めるのが安心です。主な相談先の目安は次のとおりです。

  • 自治体(市区町村)の窓口:高齢者福祉や終活支援の相談。自治体によっては終活のサポート事業を行っています。
  • 地域包括支援センター:介護や生活の困りごと、制度の案内など、高齢者の総合相談窓口です。
  • 社会福祉協議会:日常生活自立支援事業や、地域での見守り・生活支援の相談ができます。
  • 専門家(司法書士・行政書士・弁護士など):後見・遺言・死後事務などの契約手続きを相談できます。

最近は自治体が終活情報の登録やエンディングノートの配布、身元保証・死後事務に関する相談などを行う「終活支援」に取り組む例も増えています。どこに相談してよいか分からないときは、まずお住まいの自治体か地域包括支援センターに問い合わせ、地域でどんな支援があるかを早めに調べておくとよいでしょう。

よくある質問

Q. 何から始めればよいですか?

まずはエンディングノートを使って、財産・連絡先・医療や介護の希望を書き出すことから始めるのがおすすめです。全体像が見えると、後見や死後事務など次に必要な準備が判断しやすくなります。迷うときは自治体の窓口に相談してみましょう。

Q. 費用はどのくらいかかりますか?

準備する内容によって大きく異なります。任意後見・死後事務委任・遺言をそれぞれ専門家に依頼すると、契約時の報酬や公正証書の作成費用に加え、実費や預託金が必要になり、全体で数十万円以上になることが多いようです(目安)。必要なものを絞り、優先度の高いものから進めるとよいでしょう。

Q. 身元保証人がいないと入院できないのですか?

現行の考え方では、身元保証人がいないことだけを理由に入院を断るのは適切でないとされています。とはいえ緊急連絡先や費用の精算で困ることはあるため、身元保証サービスの利用や、病院の相談窓口(医療ソーシャルワーカー)への相談を検討しましょう。

Q. 相続人がいないと財産はどうなりますか?

相続人がいない場合、財産は原則として国庫に入ります。特定の人や団体に渡したいときは、遺言書(できれば公正証書遺言)を作成し、遺贈や寄付の形で意思を残しておく必要があります。

Q. 元気なうちにやっておくべきことは?

財産と書類の整理、エンディングノートの作成、緊急連絡先の準備、医療・介護の希望の整理が基本です。判断能力があるうちでないと結べない契約(任意後見・死後事務委任など)もあるため、早めの着手が安心につながります。

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まとめ

おひとりさまの終活は、「判断能力が下がったとき」「入院・手術のとき」「亡くなったあと」という3つの場面を意識して備えることが大切です。元気なうちに財産や書類を整理し、エンディングノートで希望をまとめ、必要に応じて任意後見・死後事務委任契約・遺言書などを準備しておくと、いざというときの不安を大きく減らせます。すべてを一度に整える必要はありません。できることから一つずつ進め、分からない点は自治体・地域包括支援センター・社会福祉協議会や専門家に相談しながら、自分らしい最期の備えを整えていきましょう。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、特定の制度利用や契約を勧めるものではありません。制度の内容や費用は時期・地域・事業者によって異なります。実際の手続きや契約にあたっては、お住まいの自治体・地域包括支援センター・社会福祉協議会や、司法書士・行政書士・弁護士などの専門家に必ずご確認ください。