借金や連帯保証は相続される?マイナスの財産の扱いと対処法を解説

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「相続」と聞くと、預貯金や不動産といったプラスの財産を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし相続では、亡くなった方(被相続人)が残した借金や連帯保証、住宅ローンといった「マイナスの財産(負債)」も、原則として相続人が引き継ぐことになります。プラスの財産だけを受け取り、借金は放っておく、ということは基本的にできないとされています。

この記事では、相続される可能性のあるマイナスの財産の種類や、連帯保証・住宅ローンといった見落としやすい負債の扱い、そして「借金のほうが多いかもしれない」というときの対処法を、50〜70代とそのご家族に向けてやさしく解説します。あくまで一般的な目安ですので、具体的なケースでは弁護士や司法書士など専門家への相談をおすすめします。

マイナスの財産(負債)も相続される

被相続人が亡くなると、その方が持っていた権利や義務は、原則として相続人にまとめて引き継がれるとされています。ここでいう「権利」がプラスの財産(預貯金・不動産・株式など)、「義務」がマイナスの財産(借入金・保証債務・未払金など)にあたります。

遺言などで特別な指定がない場合、マイナスの財産は法定相続分に応じて各相続人が承継するのが原則とされています。たとえば相続人が配偶者と子ども2人であれば、配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつというように、借金も法定相続分どおりに分かれて引き継がれるという考え方です。

なお、相続人になる順位や範囲は法律で定められており、配偶者は常に相続人となり、それ以外は子、直系尊属(父母など)、兄弟姉妹の順とされています。マイナスの財産も、この相続人の範囲に応じて引き継がれます。先順位の相続人が全員相続放棄をすると、次の順位の人(たとえば故人の兄弟姉妹)に借金が引き継がれることもある点に注意が必要です。

大切なのは、相続を「する・しない」を判断する前に、プラスの財産とマイナスの財産の両方をできるだけ正確に把握することです。プラスが多ければそのまま相続(単純承認)し、マイナスのほうが明らかに多ければ相続放棄を検討する、といった判断の材料になります。

相続されるマイナスの財産の種類

ひとくちにマイナスの財産といっても、その中身はさまざまです。代表的なものと扱いの目安を整理すると、次のようになります。

種類具体例扱いの目安
借入金・カードローン銀行・消費者金融からの借入、キャッシング原則、法定相続分に応じて相続人が承継
住宅ローン自宅購入時のローン残高団体信用生命保険に加入していれば完済されることが多い
連帯保証・保証債務他人の借金の連帯保証人としての地位保証人としての義務も相続の対象とされる
未払いの税金・医療費固定資産税・住民税・入院費など相続財産から支払う。放棄すれば支払い義務も消える
滞納家賃・未払金家賃・公共料金・通信販売の未払いなど原則として相続人が承継
損害賠償債務交通事故などで負った賠償義務金銭の賠償義務は原則相続の対象とされる

また、事業を営んでいた方の場合は、買掛金や未払いの仕入代金、リース料などの事業上の債務が残っていることもあります。個人の生活費に関わる借入だけでなく、仕事に関わる負債の有無も確認しておきましょう。連帯保証や損害賠償のように「書類や通知がすぐには見当たらない負債」は後から判明することもあるため、相続手続きの前に、できる限り丁寧に確認しておくことが大切です。

連帯保証人の地位も相続される

特に注意したいのが「連帯保証」です。被相続人が、たとえば親族や知人の借金、あるいは事業の融資などについて連帯保証人になっていた場合、その保証人としての義務(保証債務)も相続の対象になるとされています。

連帯保証は、主債務者(実際にお金を借りた人)がきちんと返済している間は、保証人に請求が来ることはありません。そのため、家族が保証の存在に気づかないまま相続してしまい、あとになって主債務者が返済できなくなった段階で、突然、金融機関から相続人に請求が届くというケースもあります。

なお、就職時の身元保証など、その人個人の信用にもとづく一部の保証は相続されないとされる場合もあります。一方で、金額があらかじめ想定できる通常の連帯保証は相続の対象になるのが原則です。保証債務は金額が大きくなりがちで、思わぬ負担になることもあります。故人が事業を営んでいた、他人の借金の保証を頼まれやすい立場だったといった場合は、契約書や金融機関からの通知などを特に注意して確認しておくと安心です。

住宅ローンと団体信用生命保険

自宅の住宅ローンが残っている場合でも、多くの方は「団体信用生命保険(団信)」に加入しています。団信に加入していれば、契約者が亡くなったときに保険金でローンが完済されるのが一般的とされています。この場合、残されたご家族が住宅ローンを引き継いで返済する必要は基本的にありません。

一方で、団信に加入していない住宅ローンや、フラット35などで団信を任意としていたケースでは、ローン残高がそのままマイナスの財産として相続される可能性があります。まずは金融機関の借入残高証明書やローン契約書を確認し、団信の加入状況を必ずチェックしましょう。団信で完済される場合も、金融機関への連絡などの手続きは忘れずに行う必要があります。

団信にはいくつか種類があり、がんや三大疾病などで残高が減額・免除されるタイプもあります。故人がどのタイプに加入していたかで扱いが変わることがあるため、保険証券や金融機関の案内書もあわせて確認しておくと安心です。

借金・保証の調べ方

マイナスの財産を見落とさないためには、次のような方法で調べていきます。まず、自宅に届く郵便物や、故人が保管していた契約書・カード・通帳を確認します。金融機関やカード会社からの請求書、督促状、保証に関する書類などが手がかりになります。

さらに、個人の借入状況は「信用情報機関」に開示請求することで確認できます。日本には主に3つの信用情報機関があり、それぞれ扱う情報が異なるとされています。

  • CIC(シー・アイ・シー):主にクレジットカードや割賦販売に関する情報
  • JICC(日本信用情報機構):主に消費者金融など貸金業者に関する情報
  • KSC(全国銀行個人信用情報センター):主に銀行・信用金庫などの借入情報

信用情報の開示請求は、インターネットや郵送で行えるのが一般的で、相続人であることを示す戸籍謄本などの書類と、所定の手数料が必要になります。3つの機関はそれぞれ管理する情報が違うため、借入先が想定できないときは複数の機関に請求すると、より確実に把握できます。ただし、連帯保証のように信用情報には載らない債務もあるため、書類の確認と併せて行うことが大切です。財産全体の調べ方や手続きの順序については、相続手続きの流れもあわせてご確認ください。

マイナスが多いときの対処

調べた結果、プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが明らかに多い、あるいは全体像がわからず不安が大きいという場合には、次の2つの方法があります。

相続放棄は、プラス・マイナスを問わず、いっさいの相続をしない方法です。放棄すれば借金を引き継ぐ必要はなくなりますが、預貯金や不動産などのプラスの財産も受け取れなくなります。詳しくは相続放棄の解説をご覧ください。

限定承認は、相続で得たプラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産(借金)を返済する方法です。「借金がプラスを上回るかどうかわからない」という場合に有効とされますが、相続人全員で手続きする必要があるなど、やや手間がかかります。詳しくは単純承認・限定承認をご確認ください。

相続放棄をすると、その相続人ははじめから相続人でなかったものとして扱われます。そのため放棄した人の借金の負担はなくなりますが、代わりに次順位の親族へ引き継がれることがあります。関係する家族がいる場合は、放棄することを事前に伝えておくと、あとのトラブルを防ぎやすくなります。

いずれも、原則として「自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があるとされています。この期間を過ぎると単純承認(借金も含めてすべて相続)とみなされることがあるため、判断に迷う場合は早めに弁護士・司法書士へ相談しましょう。

遺産分割で「借金は誰が払う」と決めても債権者には対抗できない

相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で、「借金は長男がまとめて払う」と決めることがあります。しかし、この合意はあくまで相続人の内部的な取り決めにすぎず、お金を貸した側(債権者)に対して当然に主張できるわけではないとされています。

つまり、相続人間で「長男が全額払う」と決めていても、債権者は各相続人に対して法定相続分に応じた金額を請求できるのが原則です。何も知らないほかの相続人のところに請求が届く可能性もあるということです。こうした事態を避けるには、債権者の承諾を得たうえで特定の相続人が債務を引き受ける(免責的債務引受)などの手続きが必要になります。

また、相続放棄や限定承認を選ばずにプラスの財産を使ってしまうと、単純承認をしたとみなされ、あとから放棄ができなくなることがあります。マイナスの財産が残っているかもしれない段階では、遺産に手をつける前に全体像を確認することが大切です。借金の分担を相続人間だけで決める場合は、この点にも十分注意し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。

生前にできる備え

マイナスの財産をめぐるトラブルは、生前の備えである程度防ぐことができます。次のような点を意識しておくとよいでしょう。

  • 借入やローンの内容を家族に共有する:どの金融機関にいくらの残高があるかを、家族がわかるようにしておきます。
  • 安易に連帯保証人にならない:保証は家族に思わぬ負担を残すことがあります。頼まれても慎重に判断しましょう。
  • 団信や生命保険で備える:住宅ローンは団信、その他の負債は生命保険でカバーできるよう検討します。
  • エンディングノートに記録する:借入・保証・ローンの情報をまとめて書き残しておくと、家族が財産の全体像を把握しやすくなります。

特にエンディングノートは、負債だけでなく資産や連絡先も一緒に整理できて便利です。書き方に迷ったらエンディングノートの書き方を参考にしてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 借金だけを相続放棄することはできますか?
A. できないとされています。相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産もすべて含めて相続しない手続きです。「預貯金は受け取り、借金だけ放棄する」という選び方はできません。借金がプラスを上回るか不明な場合は、限定承認を検討します。

Q2. 亡くなった父が他人の連帯保証人でした。保証も相続されますか?
A. 原則として、連帯保証人としての地位(保証債務)も相続の対象になるとされています。主債務者が返済している間は請求が来ませんが、将来請求される可能性があります。契約書などで内容を確認し、負担が大きい場合は相続放棄も含めて検討しましょう。

Q3. 住宅ローンは家族が返し続けなければなりませんか?
A. 団体信用生命保険(団信)に加入していれば、死亡時に保険でローンが完済されるのが一般的です。まずは団信の加入状況を金融機関に確認してください。団信がない場合は、ローン残高が相続の対象になることがあります。

Q4. 遺産分割の後になって借金が判明しました。どうすればよいですか?
A. 相続放棄の期限(原則3か月)を過ぎていても、借金の存在を知らなかった事情によっては、例外的に放棄が認められる場合があるとされています。判明した時点でできるだけ早く、弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。

Q5. 未払いの税金や医療費も相続されますか?
A. はい。固定資産税や住民税、入院費などの未払分も、原則として相続人が引き継ぐとされています。相続放棄をすれば、これらの支払い義務も負わなくなります。

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まとめ

相続では、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金・連帯保証・住宅ローンなどのマイナスの財産も、原則として法定相続分に応じて引き継がれます。特に連帯保証は後から表面化しやすく、住宅ローンは団信の有無で扱いが大きく変わります。

相続するかどうかを判断する前に、プラスとマイナスの両方をできるだけ正確に把握し、マイナスが多い場合には相続放棄や限定承認を、原則3か月の期限内に検討することが大切です。生前からの情報共有やエンディングノートへの記録も、家族の負担を減らす有効な備えになります。借金や保証の相続は、正しく調べて早めに手を打てば、必要以上に恐れることはありません。不安を感じたら一人で抱え込まず、家庭裁判所や専門家の力も借りながら、落ち着いて対応していきましょう。

本記事は一般的な情報をわかりやすくまとめたものであり、個別の状況に対する法的な助言ではありません。借金や連帯保証の相続、相続放棄・限定承認の判断など、具体的な手続きについては、弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。