結論:相続税がかかるのは全体の1割弱程度といわれるが、条件次第で誰にでも可能性がある
「相続税は一部のお金持ちだけの話」というイメージを持つ方も多いですが、実際に相続税の課税対象となる割合は、国税庁の統計によれば全国でおおむね1割弱程度(年度によって変動)にとどまるといわれています。つまり、多くの相続では相続税はかからないものの、不動産の評価額が高い都市部に住んでいる、相続人の数が少ない、生命保険の非課税枠を活用していないといった条件が重なると、平均よりも課税対象になりやすい傾向があるとされています。
自分の家庭が課税対象になりそうかどうかの目安を知りたい方は、相続税ざっくり計算機に遺産総額や法定相続人数を入力すると、基礎控除後の課税対象額の概算をすぐに確認できます。
この記事では、相続税がかかりやすいケース・かかりにくいケースの違いと、簡単な自己チェックリストを紹介します。
相続税がかかる人はどのくらいいるのか
課税割合はおおむね1割弱程度とされる
国税庁が毎年公表している相続税の申告状況に関する統計では、亡くなった人の数(被相続人数)に対して、相続税の課税対象となった人の割合(課税割合)が示されています。近年の傾向としては、この課税割合はおおむね1割弱程度で推移しているとされていますが、正確な数値は年度や地域によって変動するため、最新の割合を確認したい場合は国税庁が公表する統計資料を直接参照することをおすすめします。
平成27年の改正以降、課税割合は増加傾向にあるとされる
平成27年(2015年)の税制改正で基礎控除額が引き下げられたことにより、それ以前と比べて相続税の課税対象となる件数・割合は増加傾向にあると国税庁も説明しています。「以前は関係なかったから今回も大丈夫」と判断せず、現行の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を前提に、あらためて自分のケースを確認しておくことが望ましいといえます。基礎控除の詳しい計算方法は、別記事「相続税の基礎控除とは?国税庁の計算方法をわかりやすく解説」でも解説しています。
相続税はいくらからかかる?基礎控除額の早見表
相続税がかかるかどうかの最初の分かれ目は、遺産総額が「基礎控除額」を超えるかどうかです。現行制度では、基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、遺産総額(債務・葬式費用を差し引いた課税価格の合計)がこの金額以下であれば、原則として相続税はかからず申告も不要とされています。逆に基礎控除額を超えると、超えた部分が課税対象になります。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額(相続税がかかり始める目安) |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 |
つまり「相続税はいくらからかかるのか」の目安は法定相続人の数によって変わり、上表の金額を超えそうかどうかが最初のチェックポイントになります。ただし生命保険金・死亡退職金の非課税枠や各種特例によって課税対象額は変動するため、実際の判定には遺産全体の評価が必要です。基礎控除の詳しい考え方は相続税の基礎控除とは?国税庁の計算方法をわかりやすく解説もあわせてご参照ください。
相続税がかかりやすいとされる典型的なケース
以下のような条件に当てはまる場合、平均的な水準よりも相続税の課税対象になりやすい傾向があるといわれています。ただし、実際に課税対象になるかどうかは遺産全体の評価額と法定相続人の数の組み合わせで決まるため、あくまで傾向としての紹介です。
1. 不動産が都市部にある
相続財産の評価額のうち、不動産(とくに土地)が占める割合は大きくなりやすいとされています。都市部や地価の高いエリアに自宅や収益不動産を所有している場合、路線価などをもとにした評価額が高くなりやすく、遺産総額を押し上げる要因になります。地方に比べて都市部での相続は、同じ広さの土地でも評価額が大きく異なる点に注意が必要です。
2. 相続人の数が少ない
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されるため、法定相続人の数が少ないほど基礎控除額も小さくなります。たとえば配偶者と子1人のみ(法定相続人2人)の場合と、配偶者と子3人(法定相続人4人)の場合とでは、基礎控除額に1,200万円の差が生じます。子どもがいない、または相続人が配偶者のみ・子1人のみといった家庭は、相対的に基礎控除額が小さくなりやすい点に留意が必要です。
3. 生命保険の非課税枠を活用していない
死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」という相続税の非課税枠が別途設けられています。この非課税枠を活用せず、現金や預貯金のまま遺産として残している場合、生命保険を活用しているケースに比べて課税対象額が大きくなりやすいとされています。生命保険を相続対策として活用するかどうかは、家庭の状況によって適否が異なるため、検討する場合は専門家に相談することが望ましいとされています。
4. 退職金や死亡保険金などが多額にある
死亡退職金についても、生命保険金と同様に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられていますが、この非課税枠を超える金額は相続財産として課税対象に含まれます。会社役員や退職金水準の高い企業に勤めていた場合など、退職金が多額になるケースでは、非課税枠を超える部分が遺産総額を押し上げる要因になり得ます。
相続税がかかりにくいとされる典型的なケース
一方で、以下のようなケースでは、相続税の課税対象にならない、あるいは課税対象額が小さくなりやすい傾向があるとされています。
- 遺産の大部分が預貯金・現金で、かつ総額が基礎控除額を大きく下回っている
- 法定相続人の数が比較的多く、基礎控除額が大きくなっている
- 生命保険や死亡退職金の非課税枠を活用し、課税対象となる財産を圧縮できている
- 自宅の土地について小規模宅地等の特例の適用条件を満たしており、評価額が大きく減額される見込みがある
- 配偶者がすべて(または大部分)を相続し、配偶者の税額軽減の適用が見込める
ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用した結果として税額がゼロになる場合は、相続税の申告自体は必要になる点に注意が必要です。「税額がゼロ=何もしなくてよい」ではない点は、見落としやすいポイントとしてあらためて意識しておくとよいでしょう。
簡易チェックリスト:自分の家庭はどちらに近いか
以下の項目に当てはまる数が多いほど、相続税が課税対象になりやすい傾向があるとされています。あくまで簡易的な目安であり、実際の判定には遺産全体の正確な評価が必要です。
- 自宅や所有不動産が都市部・地価の高いエリアにある
- 法定相続人の数が1〜2人程度と少ない
- 死亡保険金・死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人数)を使い切っていない、または加入していない
- 預貯金・有価証券・不動産などを合計した遺産総額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)に近い、または上回りそうだと感じる
- 小規模宅地等の特例など評価減の特例を使える見込みが立っていない
当てはまる項目が多い場合は、遺産総額と法定相続人数を使って、相続税ざっくり計算機でおおまかな課税対象額を試算してみることをおすすめします。逆に当てはまる項目が少ない場合でも、不動産の評価額の見込み違いなどで想定より遺産総額が大きくなるケースもあるため、一度概算を確認しておくと安心につながりやすいといえます。
自分の場合を計算機で確認してみる
相続税がかかるかどうかは、遺産総額・法定相続人の数・特例の適用状況など複数の要素の組み合わせで決まるため、統計上の課税割合(1割弱程度)だけを見て「自分は大丈夫」「自分は危ない」と判断するのは早計です。まずは相続税ざっくり計算機で、ご自身の遺産総額と法定相続人数を入力し、基礎控除後の課税対象額の目安を確認してみましょう。あわせて「相続税の基礎控除とは?国税庁の計算方法をわかりやすく解説」もご参照いただくと、基礎控除や法定相続人の数え方についてより理解が深まります。
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相続税がかかる財産・かからない財産
相続税は、亡くなった人が残したすべての財産に一律にかかるわけではありません。課税対象になる財産と、非課税とされる財産をあらかじめ把握しておくと、遺産総額の見積もりがしやすくなります。
課税対象になる主な財産
- 現金・預貯金
- 土地・建物などの不動産
- 株式・投資信託などの有価証券
- 死亡保険金のうち非課税枠(500万円×法定相続人の数)を超える部分
- 死亡退職金のうち非課税枠(500万円×法定相続人の数)を超える部分
- 自動車・貴金属・書画骨董などの動産
相続税がかからない主な財産(非課税財産)
- 死亡保険金・死亡退職金のうち、非課税枠(それぞれ500万円×法定相続人の数)の範囲内の部分
- 墓地・墓石・仏壇・仏具など日常礼拝に用いるもの
- 国や地方公共団体、一定の公益法人などへ寄付した財産(一定の要件あり)
なお、生前に贈与を受けていた財産のうち一定期間内のものは、相続財産に加算して課税対象となる場合があります。どこまでが課税対象になるかの判断は複雑なため、詳細は税理士・税務署に確認することをおすすめします。
相続税がかかりそうな場合の対策の方向性
基礎控除額を超えそうな場合でも、一般的には次のような方向性で課税対象額を抑える工夫が検討されます。ただし、いずれも家庭の状況によって適否や効果が異なるため、実行前に専門家へ相談することが望ましいとされています。
- 生前贈与の活用:暦年贈与の非課税枠(基礎控除110万円)などを使い、計画的に財産を移していく方法があります。
- 生命保険の非課税枠の活用:死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)の範囲で、現預金を保険に組み替える方法が検討されます。
- 小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減:適用要件を満たすことで、評価額や税額が大きく軽減される場合があります。
このうち生前贈与については、暦年贈与でどの程度の非課税枠を使えるか、贈与税がいくらかかるかを生前贈与シミュレーター(暦年贈与の非課税枠・贈与税を計算)で試算できます。相続税と贈与税のバランスを見ながら、無理のない範囲で検討していくとよいでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 相続税は遺産がいくらからかかりますか?
A. 現行制度では、遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合に、超えた部分が課税対象になります。たとえば法定相続人が2人なら4,200万円、3人なら4,800万円が目安です。これ以下であれば原則として相続税はかからず、申告も不要とされています。
Q. 相続税がかからない場合でも申告は必要ですか?
A. 遺産総額が基礎控除額以下であれば、原則として申告は不要です。ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用した結果として税額がゼロになる場合は、特例の適用を受けるために相続税の申告が必要になります。「税額ゼロ=申告不要」ではない点に注意が必要です。
Q. 生命保険金にも相続税はかかりますか?
A. 死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられており、その範囲内であれば相続税はかかりません。非課税枠を超えた部分は相続財産として課税対象に含まれます。死亡退職金にも同様の非課税枠があります。
Q. 相続税がかかるかどうかを自分で確認する方法はありますか?
A. まずは遺産総額と法定相続人の数を把握し、基礎控除額と比べてみるのが基本です。相続税ざっくり計算機に遺産総額と法定相続人数を入力すると、基礎控除後の課税対象額の概算をすぐに確認できます。判断に迷う場合は税理士・税務署に相談することをおすすめします。
まとめ
- 国税庁の統計では、相続税の課税割合はおおむね1割弱程度とされるが、年度・地域により変動する
- 平成27年の税制改正以降、基礎控除額の引き下げにより課税割合は増加傾向にあるとされる
- 都市部の不動産保有、相続人が少ない、生命保険の非課税枠未活用などは課税対象になりやすい傾向とされる
- 特例の適用で税額がゼロでも申告が必要になる場合がある点に注意
- 自分のケースの目安は計算機で確認し、判断に迷う場合は税理士等の専門家に相談することが望ましい
出典
- 国税庁「相続税の申告事績の概要」等の統計資料
- 国税庁「相続税の計算」「相続税がかかる場合」関連ページ
- 国税庁「相続税の非課税財産(生命保険金・死亡退職金)」関連ページ
- 国税庁「小規模宅地等の特例」「配偶者の税額軽減」関連ページ
最終更新日: 2026年7月9日
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