遺留分とは?割合の計算方法と遺留分侵害額請求のやり方・期限を解説

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「全財産を長男に相続させる」といった遺言書が残されていた——そんなとき、他のご家族は何も受け取れないのだろうか、と不安になる方もいらっしゃるでしょう。じつは、現行制度では、兄弟姉妹以外の一定の相続人には、遺言があっても奪われない最低限の取り分が保障されています。これを「遺留分(いりゅうぶん)」といいます。相続はたびたび経験するものではないため、聞き慣れない言葉が多く、戸惑うのは当然のことです。このページでは、遺留分とは何か、割合の計算方法、そして侵害された分を取り戻す「遺留分侵害額請求」のやり方や期限まで、50〜70代の方とそのご家族に向けて、順を追ってやさしく解説します。

遺留分とは

遺留分とは、亡くなった方(被相続人)の遺産について、一定の相続人に法律上保障されている最低限の取得分のことをいいます。被相続人は、原則として自分の財産を遺言や生前贈与によって自由に処分できます。しかし、それを無制限に認めてしまうと、残された家族の生活が立ち行かなくなることもあります。そこで、現行制度では、遺族の生活の安定や相続人どうしの公平をはかるために、一定の相続人に最低限の取り分を確保する仕組みが設けられています。

遺留分の大きな特徴は、遺言をもってしても奪うことができない、という点にあります。たとえば「全財産を第三者に贈る」という遺言があったとしても、遺留分を持つ相続人は、後で述べる手続きによって、自分の遺留分にあたる金額を取り戻せる可能性があります。誰がどれだけ受け取れるかは、法定相続分がもとになります。相続人の範囲や順位については、法定相続人の範囲と順位もあわせてご覧ください。

遺留分がある人・ない人

遺留分は、すべての相続人に認められているわけではありません。遺留分が認められるのは、被相続人の配偶者・子(およびその代襲相続人である孫など)・直系尊属(父母や祖父母)です。一方で、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がありません。これは、兄弟姉妹は被相続人と生計が別であることが多く、生活保障の必要性が相対的に低いと考えられているためとされています。

なお、本来相続人になるはずだった子がすでに亡くなっている場合、その子(被相続人から見た孫)が代わりに相続する「代襲相続」が起こります。この孫にも遺留分は引き継がれます。逆に、相続放棄をした人ははじめから相続人でなかった扱いになるため、遺留分もなくなります。

たとえば、子どものいないご夫婦で、夫が「全財産を妻に相続させる」という遺言を残した場合、夫の兄弟姉妹には遺留分がないため、原則としてそのまま妻がすべてを受け取れることになります。一方、お子さんがいる場合には、そのお子さんに遺留分があるため、遺言の内容によっては後述の請求が起こりうる、という違いが出てきます。

遺留分の割合

遺留分の割合は、まず相続人全体で見た「総体的遺留分」を考え、それを各相続人の法定相続分で分け合う、という二段階で計算します。総体的遺留分は、原則として遺産全体の2分の1です。ただし、相続人が直系尊属(父母など)だけの場合に限り、3分の1となります。

そのうえで、各相続人の遺留分は「総体的遺留分 × その人の法定相続分」で求めます。代表的な組み合わせごとの目安を、次の表にまとめました。

相続人の組み合わせ総体的遺留分各相続人の遺留分の目安
配偶者のみ2分の1配偶者:2分の1
配偶者と子2分の1配偶者:4分の1/子(全員で):4分の1
子のみ2分の1子(全員で):2分の1
配偶者と直系尊属2分の1配偶者:3分の1/直系尊属(全員で):6分の1
直系尊属のみ3分の1直系尊属(全員で):3分の1
兄弟姉妹遺留分なし

子や直系尊属が複数いる場合は、上の「全員で」の割合を人数で等しく分けたものが、一人あたりの遺留分の目安になります。たとえば子が2人いる場合、子全体の遺留分4分の1を2人で分け、一人あたりは8分の1が目安です。あくまで概算の目安であり、実際には生前贈与や特別受益などが加わって計算が複雑になることもあります。

なお、遺留分の計算のもとになる財産には、亡くなった時点で残っていた財産のほか、原則として相続開始前の一定期間内に行われた生前贈与などが加えられ、借金などの債務が差し引かれます。そのため、「残っていた遺産」と「遺留分計算の基礎となる財産」は必ずしも一致しない点に注意が必要です。

遺留分の計算例

具体的な数字で見てみましょう。ここでは、相続人が配偶者と子2人の合計3人で、被相続人が「全財産を第三者に遺贈する」という遺言を残したケースを考えます。遺産の総額は6,000万円とします(わかりやすくするための概算例です)。

このケースの総体的遺留分は2分の1なので、相続人全体では3,000万円が遺留分にあたります。内訳の目安は次のとおりです。配偶者は4分の1にあたる1,500万円、子は全員で4分の1にあたる1,500万円で、これを2人で分けるため一人あたり750万円が目安となります。

つまり、配偶者は約1,500万円、子はそれぞれ約750万円までを、遺贈を受けた第三者に対して金銭で請求できる可能性がある、ということになります。これはあくまで単純化した目安であり、借金などの債務や生前贈与があると金額は変わります。正確な金額は、財産の内容を確認したうえで弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺留分侵害額請求とは

遺言や生前贈与によって、自分の遺留分を下回る取り分しか受け取れなかった場合、その不足分を取り戻すために行うのが「遺留分侵害額請求」です。2019年(令和元年)7月に施行された民法改正により、それまでの「遺留分減殺(げんさい)請求」から名称と仕組みが変わりました。

大きな変更点は、請求できる内容がお金に一本化されたことです。以前は、不動産などの財産そのものについて共有持分を取り戻す形が原則とされていました。現行制度では、遺留分に不足する分を金銭で支払うよう求める形に整理されています。これにより、不動産が細かく共有されてしまう不都合を避けやすくなったとされています。請求される側にすぐ支払う資金がない場合には、裁判所に対して支払期限の猶予を求められる仕組みも設けられています。

請求する相手は、遺贈や贈与を受けて利益を得た人です。複数の人が利益を得ている場合は、まず遺贈を受けた人から、次に贈与を受けた人へと、一定の順序で負担する形になります。誰にどれだけ請求できるかは状況によって変わるため、判断に迷うときは専門家に整理してもらうとよいでしょう。

請求の期限

遺留分侵害額請求には期限があり、この点はとくに注意が必要です。現行制度では、相続の開始(被相続人の死亡)と、自分の遺留分が侵害されていることの両方を知ったときから1年以内に請求しないと、時効によって権利が消えてしまうとされています。

また、相続の開始や侵害の事実を知らなかったとしても、相続開始のときから10年が経過すると、請求できなくなります。「知ってから1年」「相続開始から10年」という二つの期限があると覚えておくとよいでしょう。1年という期間は意外と短いため、遺留分が侵害されているかもしれないと感じたら、早めに専門家へ相談し、対応を検討することが大切です。期限内に請求した事実を残すために、後述の内容証明郵便を使う方法がよく取られます。

請求の流れ

遺留分侵害額請求は、必ずしも裁判をしなければならないわけではありません。一般的な流れは、次のように段階を踏んで進みます。

  1. 話し合い…まずは、遺贈や贈与を受けた相手と直接話し合い、不足分の支払いを求めます。
  2. 内容証明郵便…話し合いが難しいときや期限が迫っているときは、請求の意思を内容証明郵便で伝えます。これにより「期限内に請求した」ことの記録を残せます。
  3. 交渉…金額や支払方法について話し合いを重ねます。弁護士に代理を依頼することもできます。
  4. 調停・訴訟…話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や、地方裁判所での訴訟に進みます。

まずは冷静な話し合いから始めるのが基本ですが、期限が短いことや、財産の評価をめぐって意見が食い違いやすいことから、早い段階で弁護士に相談しておくと安心です。遺産全体の分け方について家族で話し合う場面では、遺産分割協議の進め方もあわせて参考にしてください。

生前にできる遺留分対策

遺留分をめぐるトラブルは、遺言を残す側のちょっとした配慮で、和らげられることもあります。ここでは、生前にできる対策の一例をご紹介します。いずれも状況によって向き不向きがあるため、あくまで検討の目安としてお考えください。

  • 遺留分を踏まえた分け方にする…特定の人に多く残したい場合でも、他の相続人の遺留分にあたる分は確保しておくと、後の請求を避けやすくなります。
  • 付言(ふげん)を添える…なぜその分け方にしたのか、気持ちや理由を遺言に書き添えることで、家族の納得を得やすくなることがあります。
  • 生命保険を活用する…受取人を指定した生命保険金は、原則として遺産分割の対象外とされ、渡したい相手に確実にお金を残す手段になりえます。
  • 生前に話し合っておく…元気なうちに家族で考えを共有しておくことで、相続開始後の行き違いを減らせます。

遺言そのものの作り方については遺言書の書き方を、生命保険を使った備えについては生命保険の相続税非課税枠を、それぞれあわせてご覧ください。対策の内容は一人ひとりの家族構成や財産によって変わりますので、具体的な設計は弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら進めると安心です。

よくある質問(FAQ)

Q. 兄弟姉妹に遺留分はありますか?
A. ありません。遺留分が認められるのは、被相続人の配偶者・子(およびその代襲相続人)・直系尊属で、兄弟姉妹は対象外とされています。そのため、子どものいない方が配偶者に全財産を残す遺言を作っておくと、兄弟姉妹からの遺留分請求を心配せずにすむ場合が多いです。

Q. 遺留分はいくら請求できますか?
A. 相続人の組み合わせによって変わります。総体的遺留分(原則2分の1、直系尊属のみは3分の1)に、その人の法定相続分を掛けたものが目安です。たとえば配偶者と子2人なら、配偶者は遺産の4分の1、子は一人あたり8分の1が目安となります。

Q. 請求の期限はどれくらいですか?
A. 相続開始と遺留分の侵害を知ったときから1年以内が原則です。加えて、相続開始から10年を過ぎると請求できなくなります。1年は短いため、早めの対応が大切とされています。

Q. 遺留分を請求されたら、必ず支払わなければなりませんか?
A. 相手の請求が正当であれば、原則として不足分を金銭で支払うことになります。ただし、金額の計算に争いがあることも多く、すぐに用意できない場合は裁判所に支払いの猶予を求められる仕組みもあります。まずは専門家に相談し、金額の妥当性を確認するとよいでしょう。

Q. 遺言で「遺留分は請求しないように」と書けば防げますか?
A. いいえ。遺留分は法律で保障された権利のため、遺言にそのように書いても、相続人の請求そのものを封じることはできないとされています。防ぎたい場合は、遺留分を踏まえた分け方や付言などの配慮を検討することになります。

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まとめ

遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人(配偶者・子・直系尊属)に保障された、遺言でも奪えない最低限の取り分です。総体的遺留分は原則2分の1(直系尊属のみは3分の1)で、そこに法定相続分を掛けたものが各人の目安になります。侵害された場合は、2019年の改正で金銭請求となった「遺留分侵害額請求」によって取り戻せますが、「知ってから1年・相続開始から10年」という期限があるため、早めの対応が欠かせません。まずは話し合いから始め、まとまらなければ内容証明・調停・訴訟へと段階的に進めるのが一般的な流れです。

遺留分侵害額請求の権利は、期限を過ぎると相手方が「時効」を主張することで消えてしまいます。裏を返せば、期限内にきちんと請求の意思を伝えておけば、その後の話し合いに時間がかかっても権利は守られます。だからこそ、まずは早めに請求の意思を明確に示しておくことが肝心です。

本記事は現行制度をもとにした一般的な解説であり、記載の割合や金額はあくまで目安・概算です。実際の遺留分の有無や金額、請求の可否は、家族構成・財産の内容・生前贈与の有無などによって異なります。個別の判断や手続きにあたっては、弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。