家族が亡くなったあと、遺族には葬儀の手配だけでなく、数多くの届出や手続きが待っています。死亡届の提出から年金の受給停止、健康保険や公共料金の名義変更、銀行口座の手続きまで、その数は数十種類にのぼることも珍しくありません。しかも、なかには期限が決まっているものもあり、悲しみのなかであわてて対応することになりがちです。
この記事では、遺族がやるべき手続きを「期限順のチェックリスト」としてまとめ、年金・保険・公共料金・銀行・カード・遺品など、生活まわりの届出を中心にやさしく解説します。相続税や遺産分割といった相続そのものの手続きは期限や専門知識が関わるため、別の記事で詳しく取り上げています。あわせてご覧ください。
※金額や期限は現行制度にもとづく目安です。細かい条件はお住まいの役所や年金事務所、専門家にご確認ください。
死後の手続きの全体像|4つの分野に分けて考える
死後の手続きは種類が多く、一覧にすると圧倒されてしまいがちです。まずは大きく4つの分野に分けて全体像をつかんでおくと、「何から手をつければよいか」が整理しやすくなります。
- 葬儀・供養に関すること…死亡届、火葬・埋葬の許可、葬儀、初七日・四十九日の法要など
- 行政の届出…年金の受給停止、健康保険・介護保険の資格喪失、世帯主変更など
- 生活インフラの手続き…電気・ガス・水道、NHK、携帯電話、サブスク、銀行口座、クレジットカードなど
- 相続に関すること…遺産分割、相続放棄、相続税の申告など
このうち、期限が短く待ったなしなのが「葬儀・供養」と「行政の届出」です。「生活インフラ」は少し落ち着いてからでも進められますが、放置すると料金が発生し続けたり、口座が使えず困ったりすることがあります。「相続」は3か月・10か月といった大きな期限があり、別途しっかり取り組む必要があります。本記事では、生活まわりの届出を中心に、時系列で見ていきましょう。
期限順チェックリスト|手続き・期限・窓口の早見表
遺族がやるべきおもな手続きを、期限の目安が早い順にまとめました。すべてを一度に行う必要はありません。まずは上から順に、ご自身の家庭に当てはまるものだけをチェックしていけば大丈夫です。
| 手続き | 期限の目安 | おもな窓口 |
|---|---|---|
| 死亡届・火葬許可の申請 | 死亡を知った日から7日以内 | 市区町村役所(葬儀社が代行することも) |
| 世帯主変更届 | 14日以内 | 市区町村役所 |
| 年金受給の停止 | 厚生年金は10日以内・国民年金は14日以内(目安) | 年金事務所・年金相談センター |
| 未支給年金の請求 | すみやかに(時効5年) | 年金事務所 |
| 健康保険・後期高齢者医療の資格喪失 | 14日以内 | 市区町村役所・健康保険組合 |
| 介護保険の資格喪失・保険証返納 | 14日以内 | 市区町村役所 |
| 公共料金・NHK・携帯の名義変更/解約 | 早めに | 各契約先 |
| クレジットカードの解約 | 早めに | カード会社 |
| 銀行口座の届出(相続手続きへ) | 早めに | 各金融機関 |
| 運転免許証の返納 | 早めに | 警察署・運転免許センター |
| パスポートの返納 | 早めに | パスポートセンター |
| 葬祭費・埋葬料の請求 | 2年以内 | 市区町村役所・健康保険組合 |
| 生命保険金の請求 | 3年以内が目安 | 保険会社 |
| 遺族年金の請求 | 5年以内 | 年金事務所 |
| 相続放棄・限定承認 | 3か月以内 | 家庭裁判所 |
| 相続税の申告・納付 | 10か月以内 | 税務署 |
期限はあくまで目安です。土日祝日や役所の受付時間の関係で前後することもあります。年金や保険の手続きは、亡くなった方が加入していた制度(会社員か自営業か、後期高齢者医療かなど)によって窓口や期限が変わります。迷ったら、まずはお住まいの市区町村役所に電話で相談すると、必要な手続きを案内してもらえます。
【葬儀後すぐ】死亡届と火葬許可・葬儀関連
まず必要になるのが死亡届です。医師が作成する死亡診断書(死体検案書)と一体になった用紙で、死亡を知った日から7日以内に、亡くなった方の本籍地・死亡地・届出人の住所地のいずれかの市区町村役所に提出します。届出をすると火葬許可証が交付され、これがないと火葬ができません。実務上は、この一連の届出を葬儀社が代行してくれることが多く、遺族は署名・押印などを行うだけで済むケースがほとんどです。
死亡診断書は、生命保険金の請求や年金の手続きなど、後の場面で提出を求められることがあります。原本は1通しかないため、役所に提出する前にコピーを5〜10枚ほど取っておくと安心です。また、葬儀にかかった費用の領収書や明細は必ず保管しておきましょう。後述する葬祭費・埋葬料の申請や、相続税の計算で葬儀費用を差し引く際に必要になります。
葬儀そのものの形式や費用の目安については、家族葬とは?費用相場と流れの記事もあわせてご覧ください。
【〜2週間】行政の届出(年金・健康保険・介護保険・世帯主変更)
葬儀が一段落したら、役所や年金事務所での届出を進めます。期限が14日前後と短いものが多いため、早めに動くのがポイントです。
年金の受給停止と未支給年金の請求
年金を受け取っていた方が亡くなったら、年金の受給を止める手続きが必要です。期限の目安は厚生年金で10日以内、国民年金で14日以内とされています。日本年金機構に亡くなった方のマイナンバーが登録されている場合は、届出が省略できることもあります。手続きが遅れて年金を受け取りすぎると、あとで返還が必要になるので注意しましょう。あわせて、亡くなった月分までのまだ支払われていない年金(未支給年金)は、生計を同じくしていた遺族が請求できます。
健康保険・後期高齢者医療の資格喪失
亡くなった方の健康保険証を返却し、資格喪失の手続きをします。国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合は市区町村役所、会社の健康保険の場合は勤務先や健康保険組合が窓口です。国民健康保険では、後日、保険料の精算や葬祭費の案内が行われることがあります。
介護保険の資格喪失・保険証の返納
介護保険の被保険者証を持っていた方は、市区町村役所に返納し、資格喪失の届出を行います。未納・過納の保険料があれば、あわせて精算されます。
世帯主変更届
亡くなった方が世帯主だった場合、残された世帯員が2人以上いるときは、14日以内に世帯主変更届を市区町村役所に提出します。残った世帯員が1人だけのときや、次の世帯主が明らかなときは、届出が不要な場合もあります。
【早めに】生活インフラの手続き(公共料金・NHK・携帯・銀行・カード)
毎月料金が発生する契約は、名義変更や解約を早めに行いましょう。放置すると、使っていないサービスの料金が引き落とされ続けてしまいます。
- 電気・ガス・水道…同居家族が住み続けるなら名義変更、住まないなら解約。各社の窓口やWebでOK
- NHK・固定電話・インターネット…名義変更または解約。契約者本人が亡くなった旨を伝える
- 携帯電話・スマホ…解約または承継。端末内のデータや連絡先が必要な場合は解約前に確認を
- サブスク(動画・音楽配信、アプリ課金、有料会員など)…見落としやすいので、通帳やカード明細から洗い出して解約
クレジットカードは、名義人が亡くなったらカード会社に連絡し、解約します。カードに紐づく年会費や公共料金・サブスクの引き落としが止まるほか、未払い残高がある場合は相続の対象になります。
銀行口座は凍結される|仕組みと手続き
金融機関が名義人の死亡を確認すると、その口座は凍結され、入出金や引き落としができなくなります。凍結は「死亡届を役所に出すと自動的に」行われるわけではなく、遺族が銀行に連絡したり、銀行が新聞のお悔やみ欄などで把握したりして行われます。凍結後にお金を引き出すには、遺言書や遺産分割協議書、相続人全員の同意など、相続手続きに沿った書類が必要です。
葬儀費用など当面のお金が必要なときは、一定額まで払い戻しを受けられる「預貯金の払戻し制度」を利用できる場合があります。口座凍結後の具体的な流れは、相続手続きの流れと期限一覧で詳しく解説しています。
【落ち着いたら】遺品整理とデジタル遺品
葬儀や行政の届出が落ち着いたら、遺品の整理に取りかかります。急いで処分すると、あとで必要な書類や貴重品が見つからなくなることがあるため、まずは重要書類・貴重品を先に確保しましょう。通帳、印鑑、保険証券、年金手帳、権利証、遺言書、契約書類などは、手続きで必要になります。
近年とくに悩ましいのがデジタル遺品です。スマホやパソコンのパスワードがわからず、中の写真や連絡先、ネット銀行・ネット証券の口座、SNSアカウントにアクセスできない、というトラブルが増えています。ネット銀行・ネット証券は紙の通帳がないため、遺族が口座の存在に気づかないこともあります。メールやカード明細から取引先を探し、各社の相続手続き窓口に連絡しましょう。SNSは、追悼アカウントへの切り替えや削除の申請ができる場合があります。
こうしたトラブルを防ぐには、元気なうちに口座やパスワードの情報をまとめておくことが有効です。エンディングノートの書き方もあわせて参考にしてください。
受け取れるお金の手続き|葬祭費・遺族年金・生命保険金
手続きには「支払う・返す」ものだけでなく、遺族が受け取れるお金もあります。申請しないともらえないものが多いので、忘れずに手続きしましょう。以下はいずれも目安であり、支給の可否や金額は加入状況や家族構成によって変わります。
葬祭費・埋葬料
国民健康保険や後期高齢者医療制度の加入者が亡くなると、葬儀を行った方に葬祭費(自治体により3万〜7万円程度が目安)が支給されます。会社の健康保険の場合は埋葬料(5万円が目安)が支給されます。申請先はそれぞれ市区町村役所や健康保険組合で、時効は2年です。
遺族年金
亡くなった方に生計を維持されていた配偶者や子などは、遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)を受け取れる場合があります。受給できるかどうかや金額は、加入していた年金の種類、保険料の納付状況、遺族の年齢や人数によって細かく決まります。年金事務所で確認・請求しましょう。時効は5年です。
生命保険金・高額療養費など
亡くなった方が生命保険に加入していた場合、受取人が保険会社に生命保険金を請求します。請求には死亡診断書のコピーなどが必要で、時効は3年が目安です。また、亡くなる前の医療費が高額だった場合は、高額療養費の払い戻しを受けられることがあります。
相続に関する手続きは別途|期限のあるものは専門記事へ
ここまでは生活まわりの届出を中心に見てきましたが、これとは別に相続そのものの手続きがあります。相続には期限が決まっているものがあり、対応が遅れると不利になることもあるため注意が必要です。
- 相続放棄・限定承認…借金などマイナスの財産を引き継ぎたくないときは、原則3か月以内に家庭裁判所へ申述します
- 準確定申告…亡くなった方に確定申告が必要だった場合は4か月以内
- 相続税の申告・納付…課税対象になる場合は10か月以内に税務署へ
これらの詳しい流れや必要書類は、相続手続きの流れと期限一覧や、相続放棄とは?手続きの流れと期限の記事で解説しています。財産や借金の状況によっては判断が難しいこともあるため、迷ったときは早めに専門家(司法書士・税理士・弁護士など)に相談しましょう。
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よくある質問(FAQ)
Q. 何から手をつければいいですか?
A. まずは葬儀に必要な死亡届と火葬許可(多くは葬儀社が代行)、次に年金の停止や健康保険・介護保険の資格喪失、世帯主変更といった役所の届出です。期限が14日前後と短いものから片づけ、公共料金や銀行の手続きは少し落ち着いてからでも構いません。
Q. 手続きは家族だけでできますか?
A. 役所や年金、公共料金などの多くは、遺族が窓口や電話・Webで進められます。ただし、相続財産の分け方でもめそうなときや、不動産の名義変更、相続税の申告などは専門知識が必要になるため、司法書士・税理士・弁護士に依頼すると安心です。
Q. 銀行口座はいつ凍結されますか?
A. 役所に死亡届を出しても自動では凍結されません。遺族が銀行に連絡したときや、銀行が死亡を把握したときに凍結されます。凍結後は相続手続きに沿った書類がないと引き出せませんが、当面の費用は払戻し制度を利用できる場合があります。
Q. 受け取れるお金にはどんなものがありますか?
A. 葬祭費・埋葬料、遺族年金、生命保険金、未支給年金、高額療養費などがあります。いずれも申請しないと受け取れないものが多く、2〜5年ほどの時効があります。心当たりがあれば、役所・年金事務所・保険会社に確認しましょう。
Q. 手続きに共通して必要な書類は?
A. 死亡診断書のコピー、亡くなった方や相続人の戸籍・住民票、印鑑(実印・印鑑証明)、通帳や保険証券などが多くの手続きで必要になります。戸籍などは複数通まとめて取得しておくと、何度も役所に足を運ばずに済みます。
相続の手続きに不安があるとき
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まとめ
死後の手続きは数が多く複雑ですが、「葬儀・行政・生活・相続」の4分野に分け、期限の早いものから片づけていけば、一つずつ確実に進められます。死亡届と火葬許可、年金の停止、健康保険・介護保険の資格喪失、世帯主変更といった期限の短い届出をまず優先し、公共料金・銀行・カードなどの生活インフラは落ち着いてから対応しましょう。
また、葬祭費や遺族年金、生命保険金など、申請すれば受け取れるお金もあります。忘れずに手続きしてください。相続放棄や相続税など期限のある相続手続きは、相続手続きの流れと期限一覧の記事もあわせてご確認ください。
この記事の内容は現行制度にもとづく一般的な目安です。ご家庭の事情や制度改正によって手続きや金額は変わることがあります。判断に迷うときは、お住まいの市区町村役所・年金事務所や、司法書士・税理士などの専門家に確認しながら進めることをおすすめします。
