相続税の税務調査とは?入りやすいケース・時期・調べられることと対策を解説

執筆者:

カテゴリ:

相続税の申告を終えたあと、「あとから税務署の調査が入るのではないか」と不安に感じる方は少なくありません。相続税は、ほかの税目と比べて税務調査が行われやすいとされています。とはいえ、財産をきちんと把握し、正しく申告していれば、過度に恐れる必要はありません。この記事では、相続税の税務調査とはどのようなものか、入りやすいケースや時期、調べられる内容、当日の流れ、そして事前にできる対策までを、50代〜70代の方とそのご家族に向けてやさしく解説します。

相続税の税務調査とは

相続税の税務調査とは、提出された相続税の申告内容が正しいかどうかを、税務署が確認するための手続きです。申告漏れや財産評価の誤りがないかを調べ、必要に応じて修正を求めます。多くは、調査官が事前に日程を連絡したうえで自宅などを訪れる「任意調査」が中心です。強制的に行われる調査は、悪質な脱税が疑われるごく一部のケースに限られます。

相続税で税務調査が比較的行われやすいとされるのは、相続財産の全体像を相続人自身が正確に把握しきれていないことがあるためです。長年の預貯金や不動産、生前の贈与など、財産の種類が多岐にわたるうえ、被相続人本人が亡くなっているために事情を確認しづらいことも背景にあります。そのため税務署は、事前に金融機関などから資料を集め、申告内容と照らし合わせたうえで、調査に入るかどうかを判断しているとされています。

現行制度では、相続税を申告した方のうち一定の割合に対して、実地調査(自宅などへ調査官が訪れる調査)が行われるとされています。その割合は年によって変わりますが、おおむね1割前後が一つの目安といわれています。近年は、書面や電話で確認を求める「簡易な接触」も増えているとされています。いずれにしても、申告した全員に調査が入るわけではありません。

調査が入りやすいケース

税務調査は、どの申告にも均等に入るわけではなく、申告漏れの可能性が高いと見られるものが選ばれやすい傾向があります。あくまで一般的な傾向としてですが、次のようなケースは確認の対象になりやすいとされています。

ケース傾向・理由(あくまで一般的な傾向)
申告漏れが疑われる財産の一部が申告に含まれていないと見られる場合
名義預金がある家族名義でも実質は被相続人の預金と考えられる場合
申告額が大きい遺産総額が高額なほど確認の対象になりやすい傾向
無申告である基礎控除を超えるのに申告がされていない場合
現金の動きが不自然生前に多額の出金があり、使いみちが不明な場合
財産が預貯金中心金額を把握しやすく、確認がしやすいとされる場合

なかでも名義預金は、相続税の調査で指摘されやすい代表的なものとされています。たとえば、親が子や孫の名義で口座を作り、そこにお金を入れていたようなケースです。名義は家族でも、お金を出したのが被相続人で、通帳や印鑑も被相続人が管理していた場合は、実質的に被相続人の財産と見なされることがあります。こうした点は、家族にとっては見落としやすいところです。

無申告のケースも注意が必要です。相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数が一つの目安)があり、これを超える財産があるのに申告をしていない場合、税務署は集めた資料からその可能性を把握していることがあるとされています。「申告が必要かどうか分からない」というときこそ、自己判断で済ませず、早めに専門家に確認しておくと安心です。

いずれのケースも「疑われたら必ず調査が入る」というものではなく、あくまで傾向です。心当たりがある場合は、申告の段階で税理士に相談しておくと安心です。そもそも相続税がかかるかどうかの基準に不安がある方は、相続税がかかる基準もあわせてご確認ください。

調査が行われやすい時期

相続税の税務調査は、申告してすぐに行われるわけではありません。一般的には、申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10か月)を過ぎてから、1〜2年ほど経ったころに実施されることが多いとされています。とくに、税務署が人事異動を終えて体制が整う秋ごろ、8月から11月あたりに連絡が来るケースが多いといわれています。

これはあくまで目安であり、必ずこの時期に来るというものではありません。申告から数年が経ってから連絡が来ることもあります。一定の期間が過ぎれば時効(除斥期間)により調査ができなくなりますが、その期間は原則として長く設定されているため、「数年たったからもう安心」と考えず、申告に関する書類は長く保管しておくことが大切です。連絡が来ないまま一定期間が過ぎれば、調査は行われなかったと考えてよいでしょう。

何を調べられるのか

相続税の税務調査では、申告された財産が実際の内容と合っているかが確認されます。とくに次のような点が重点的に調べられるとされています。

  • 預貯金の流れ:被相続人や家族の口座の入出金の履歴。過去数年分をさかのぼって確認されることがあります。
  • 名義預金:家族名義でも、実際には被相続人が管理していたお金は相続財産と見なされることがあります。くわしくは名義預金の解説もご覧ください。
  • 生前贈与:亡くなる前の贈与が正しく扱われているか。贈与の時期や記録が確認されます。生前贈与のやり方を知っておくと整理に役立ちます。
  • タンス預金・手元現金:自宅に保管された現金が申告に含まれているか。
  • 不動産や有価証券:土地・建物の評価や、株式・投資信託などの申告内容。
  • 生活費とのつり合い:収入や生活水準に対して、残った財産が不自然に少なくないか。

これらの確認のために、税務署は金融機関に対して取引の照会を行うことができるとされています。そのため、家族名義の口座や、すでに解約された口座であっても、過去の入出金がさかのぼって確認されることがあります。「家族の口座だから分からないだろう」と考えず、実質的な持ち主の視点で財産を整理しておくことが大切です。とくに預貯金の動きは重視される傾向があるため、大きな出金があった場合は、その使いみちを説明できるようにしておくと安心です。たとえば、生活費や医療費、住宅のリフォーム費用などに使ったのであれば、領収書や振込の記録を残しておくと、いざというときに落ち着いて説明できます。

調査当日の流れ

実地調査は、多くの場合、被相続人が住んでいた自宅で行われます。当日は、調査官が2名ほどで訪れ、まずは被相続人の生い立ちや仕事、財産の状況、家族構成などについての聞き取りから始まるのが一般的です。和やかな雑談のように見えても、財産の把握につながる質問が含まれていることがあります。

その後、通帳や印鑑、証書類などの資料を確認し、必要に応じて金庫やタンスの中を見せてほしいと求められることもあります。所要時間は、午前から午後にかけての1日程度が目安とされています。その場ですべてが決まるわけではなく、後日あらためて追加の資料を求められたり、結果の連絡が来たりする流れが一般的です。なお、質問されたことには、その場で分かる範囲を答えれば十分です。記憶があいまいな点まで無理に答える必要はなく、「後日確認して回答します」と伝えても差し支えありません。

指摘されやすいポイントと追徴課税

調査の結果、申告漏れなどが見つかると、本来納めるべき税額に加えて、ペナルティとしての税金(加算税や延滞税)がかかることがあります。主なものは次のとおりです。

  • 過少申告加算税:申告額が本来より少なかった場合に、追加で納める税額に対してかかります。
  • 無申告加算税:申告が必要なのにしていなかった場合にかかります。
  • 重加算税:財産を意図的に隠すなど、悪質と判断された場合に課される重いペナルティです。
  • 延滞税:納付が遅れた期間に応じてかかる、利息のような性質の税です。

単純な計算間違いなどと、意図的に隠したと判断される場合とでは、負担の重さが大きく異なります。とくに重加算税は税率が高く設定されているため、財産を隠すことは避けるべきです。一方で、調査の連絡が来る前に自分から誤りに気づいて修正申告をした場合は、ペナルティが軽くなることがあるとされています。加算税や延滞税の具体的な割合は制度改正で変わることがあるため、正確な税額については税理士や税務署にご確認ください。

(PR)税務調査や相続税申告が不安な方は、相続に強い税理士に無料で相談できるサービスもあります

税務調査に備える対策

税務調査を過度に恐れる必要はありませんが、事前に備えておくことで、いざというときに落ち着いて対応できます。次のような点を意識しておくとよいでしょう。

  • 財産を正確に把握する:預貯金・不動産・有価証券・保険などを漏れなく洗い出しておきます。
  • 名義預金を整理する:家族名義の口座でも実質的な持ち主を確認し、必要なら申告に含めます。
  • 贈与の記録を残す:生前贈与は、契約書や振込の記録など、あとから説明できる形で残しておきます。
  • 税理士に依頼する:相続税にくわしい税理士に申告を任せると、誤りを防ぎやすくなります。
  • 書類を保管する:通帳や申告書の控えなどは、長期間保管しておきます。

また、相続が始まる前の段階から、財産の一覧(財産目録)を少しずつ作っておくと、いざというときに家族が困りにくくなります。エンディングノートなどに、預貯金の口座や不動産、保険の情報をまとめておくのも一つの方法です。生前の準備が、結果として相続後の税務調査への備えにもつながります。申告そのものの手続きに不安がある方は、相続税の申告と納付の流れもあわせて確認しておくと安心です。

調査の連絡が来たときの対応

税務署から調査の連絡が来ても、まずは慌てないことが大切です。多くは事前に日程の相談があるため、都合が悪ければ調整をお願いすることもできます。連絡を受けたら、申告を担当した税理士がいる場合は、まず税理士に相談しましょう。当日は税理士に立ち会ってもらうこともできます。

調査当日は、聞かれたことに正直に答えることが基本です。分からないことを無理に答えたり、事実と違うことを言ったりすると、かえって不利になることがあります。あいまいな点は「確認します」と伝え、あとから正確な資料で回答すれば問題ありません。誠実に対応する姿勢が、調査をスムーズに進めることにつながります。

よくある質問

相続税の税務調査は必ず来るのですか?

いいえ、申告した全員に来るわけではありません。実地調査が行われるのは申告した方の一部とされており、正しく申告していれば過度に心配する必要はありません。

いくらから調査の対象になりますか?

金額だけで一律に決まるわけではありません。ただし、遺産総額が大きいほど確認の対象になりやすい傾向があるとされています。金額の多い少ないにかかわらず、正確な申告が大切です。

調査が来たらどうすればよいですか?

まずは慌てず、申告を担当した税理士に相談しましょう。当日は聞かれたことに正直に答え、分からない点は無理に答えず後日確認すれば大丈夫です。

タンス預金は税務署に分かるのですか?

自宅に保管した現金であっても、預貯金の出金の流れなどから把握される場合があるとされています。手元の現金も相続財産に含まれるため、申告に含めておくことが大切です。

申告漏れに気づいたらどうすればよいですか?

調査の連絡が来る前に自分から修正申告をすれば、ペナルティが軽くなる場合があるとされています。気づいた時点で、早めに税理士や税務署に相談しましょう。

税理士に相談したいとき

(PR)相続税の具体的な計算や申告は、専門的な判断が必要になる場面も少なくありません。相続に強い税理士を無料で探せるサービスもあります。

PR

「相続税がかかりそう」と出た方へ

実際の相続税は、財産の評価方法や特例(小規模宅地・配偶者控除など)の使い方で大きく変わります。「税理士ドットコム」なら、相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。申告が必要かどうかの相談だけでも可能です。

相続に強い税理士を無料で探す(税理士ドットコム)

※本サービスは当サイトの提携先が提供します。紹介・相談は無料です。

まとめ

相続税の税務調査は、申告内容が正しいかを確認するための手続きです。名義預金や生前贈与、現金の動きなどが重点的に調べられますが、財産を正確に把握し、正しく申告していれば過度に恐れる必要はありません。不安がある場合は早めに税理士に相談し、申告書類はしっかり保管しておきましょう。落ち着いて誠実に対応することが、いちばんの備えになります。

大切なのは、財産を隠すことでも、必要以上に身構えることでもなく、財産を正しく把握して誠実に申告することです。税務調査は、正しく申告した方をむやみに困らせるための制度ではありません。生前からの少しずつの準備と、信頼できる専門家への相談が、ご本人にとってもご家族にとっても、いちばんの安心につながります。

※本記事は現行制度をもとにした一般的な解説であり、加算税の割合や調査の運用は変わることがあります。個別の税額や申告の判断については、必ず税理士や所轄の税務署にご確認ください。